Azure VM Backup における CRR (クロスリージョン リストア) について

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こんにちは、Azure Backup サポートです。
今回は、Azure Backup での リージョンをまたがる復元( = Cross-Region Restore / CRR)にて頻繁にいただくお問い合わせに関して、下記ご案内いたします。

目次


1. CRR 機能を有効した場合の、冗長性オプションは「GRS」になるのか、「RA-GRS」になるのか?
1-1. Azure Portal での CRR 有効時の確認方法
1-2. GRS と RA-GRS(CRR有効化) の違い
1-3. セカンダリ リージョンへのリストア手順
2. セカンダリ リージョンへ復元ポイントがレプリケートされるまでに、最大何時間かかるのか?
3. セカンダリ リージョンへ復元ポイントがいつレプリケート完了したか、Azure ポータル画面上でどのように確認すればよいのか?
3-1. 補足:バックアップ ジョブについて
4. 災害復旧後のレプリケーションについて


1. CRR 機能を有効した場合の、冗長性オプションは「GRS」になるのか、「RA-GRS」になるのか?

結論から申し上げますと、RA-GRS となります。
CRR_01

・Azure Backup 用語集 - Azure Backup | Microsoft Docs
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/backup/azure-backup-glossary#grs

1-1. Azure Portal での CRR 有効時の確認方法

ご参考までに、CRR 機能を有効にした場合の Azure ポータル画面上の見え方を説明いたします。
Recovery Services コンテナー「RSV-JPE-GRS-CRR」は「ストレージ レプリケーションの種類:geo 冗長」かつ「リージョンをまたがる復元:有効にする」となっております。
これによって CRR 機能が有効 (=RA-GRS) となります。

CRR_02

CRR 機能が有効になっている場合、「バックアップ アイテム」画面上では「プライマリ リージョン」のほかに「セカンダリ リージョン」も選択できるよう、活性化されます。
CRR_03
CRR_04

一方でRecovery Services コンテナー上で「リージョンをまたがる復元:無効にする」を選択されている場合は、下図のように「プライマリ リージョン」がデフォルトで選択されており、かつ非活性表示となっているため「セカンダリ リージョン」への切り替えが不可能となっております。
CRR_05

警告

CRR 機能が有効にされてから上記「セカンダリ リージョン」の項目が活性化されるまで最大で 48 時間かかりますのでご注意ください。


・ Recovery Services コンテナーを作成して構成する - Azure Backup | Microsoft Learn : リージョンをまたがる復元の設定

  https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/backup/backup-create-recovery-services-vault#set-cross-region-restore

1-2. GRS と RA-GRS (CRR有効化時) の違い

Recovery Services コンテナーの冗長性が GRS であっても、RA-GRS (CRR有効化時) であってもセカンダリ リージョンにバックアップデータはレプリケーションされ保持されます。
違いは任意のタイミングでセカンダリ リージョンへ復元できるかどうかです。

・geo 冗長ストレージ (GRS) コンテナーで、リージョンをまたがる復元 (CRR) 機能が有効になっている場合とそうでない場合では、どのような違いがありますか。
 https://learn.microsoft.com/ja-jp/azure/backup/backup-azure-backup-faq#geo----------grs-----------------------crr----------------------------------------
 “CRR 機能が有効になっていない GRS コンテナーの場合、Azure によってプライマリ リージョンでの障害が宣言されるまで、セカンダリ リージョンのデータにはアクセスできません。 このような場合、セカンダリ リージョンから復元が行われます。
  CRR が有効になっている場合、プライマリ リージョンが稼働している場合でも、セカンダリ リージョンでの復元をトリガーできます。”

またコストは RA-GRS (CRR有効化) にすることでストレージ単価が高くなりますのでその点ご留意ください。詳細に関しては下記をご覧ください。
・Azure Backup の価格 - バックアップ ストレージ の項目をご覧ください。
https://azure.microsoft.com/ja-jp/pricing/details/backup/

1-3. セカンダリ リージョンへのリストア手順

下記公開情報をご覧ください。
・セカンダリ リージョンに復元する - Azure portal で Azure VM データを復元する方法
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/backup/backup-azure-arm-restore-vms#restore-in-secondary-region

2. セカンダリ リージョンへ復元ポイントがレプリケートされるまでに、最大何時間かかるのか?

セカンダリ リージョンへのデータのレプリケーションは、プライマリリージョンへのバックアップジョブが完了 (最大24時間) してから 12 時間以内にレプリケーションが完了するように動作します。
そのため、プライマリリージョンのバックアップジョブ完了とセカンダリ リージョンへのレプリケーションにはラグが生じます。

・Azure portal を使用して VM を復元する - Azure Backup | Microsoft Docs
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/backup/backup-azure-arm-restore-vms#restore-in-secondary-region

現在、セカンダリ リージョンの RPO は “36 時間” です。 これは、プライマリ リージョンの RPO が “24 時間” であり、プライマリからセカンダリ リージョンへのバックアップ データのレプリケーションに最大 “12 時間” かかることがあるためです。

3. セカンダリ リージョンへ復元ポイントがいつレプリケート完了したか、Azure ポータル画面上でどのように確認すればよいのか?

Recovery Services コンテナー > バックアップ アイテム > セカンダリ リージョン > Azure Virtual Machine > 対象の仮想マシンを選択し、「復元ポイント」欄に、対象の復元ポイントが表示されていれば、セカンダリ リージョンへのレプリケートは完了していると判断できます。

作業例)プライマリ リージョンに配置されている仮想マシン「SAPHANA03」を「今すぐバックアップ」を実施し、取得された復元ポイントがセカンダリ リージョンに複製されているかを確認する
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下図画面の黄色罫線部分が、「今すぐバックアップ」にてトリガーし、バックアップが完了したバックアップ ジョブです。
2021/12/9 17:50 に「今すぐバックアップ」のバックアップ ジョブがトリガーされ、18:21 ごろにバックアップが完了しております。
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バックアップ アイテム > プライマリ リージョン > Azure Virtual Machine 画面上の「最新の復元ポイント」に表示されている時刻は、バックアップが実行開始された時刻となります。
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「プライマリ リージョン」側のバックアップ項目画面では、「復元ポイント」欄に、取得済の復元ポイントが表示されています。
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一方で、バックアップ アイテム > セカンダリ リージョン > Azure Virtual Machine > 対象の仮想マシンをクリックします。
バックアップ項目画面では、「復元ポイント」欄に、12/09 18:32 時点では、12/09 にプライマリ リージョン側にて取得済の復元ポイントはまだ表示されておらず、セカンダリ リージョン側に復元ポイントが複製されていないことが分かります。
(2021/12/09 24時ごろも確認しましたが、復元ポイントは表示されておりませんでした)
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同じく、「セカンダリ リージョンへの復元」をクリックし、「復元ポイントの選択」欄を表示しても、12/09 17:50 に開始・取得済の復元ポイントは表示されていないことが確認できます。
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2021/12/09 17:50 Auzre VM Backup 開始後、 12 時間以上経過した 2021/12/10 8:09 時点では、「復元ポイントの選択」欄にて、セカンダリ リージョンのデータとして 17:50 のバックアップ開始分が表示されていることが確認できました。

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補足:セカンダリ リージョンのジョブについて

Recovery Services コンテナー > バックアップ ジョブ >「セカンダリ リージョンのジョブを表示する」をクリックすると、セカンダリ リージョンのリストア ジョブを確認可能です。
しかし、プライマリ リージョンに配置されている仮想マシンのバックアップ ジョブは、 セカンダリ リージョンのバックアップ ジョブ上には表示されません。
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災害復旧後のレプリケーションに関するFAQ

Q. プライマリリージョンが復旧したあとに プライマリリージョンに VM を復旧できるか

A. こちらは可能ですが、Azure VM Backup の機能で実現するにはクロスリージョン リストアを実施いただく必要がございます。
具体的には一度セカンダリリージョンに VM をリストア いただき、復元した VM をセカンダリリージョンの Recovery Services コンテナーで保護しプライマリリージョンにクロスリージョン リストアを行う必要がございます。
これはセカンダリリージョンにあるバックアップデータからはセカンダリリージョンにしか、プライマリリージョンにあるバックアップデータからはプライマリリージョンにしかリストアができないためです。
Azure VM Backup の クロスリージョン リストア以外の方法ではセカンダリリージョンに VM をリストアした後に Azure Site Recovery などを用いた方法が考えられます。
・Azure VM を別の Azure リージョンに移動する
https://docs.microsoft.com/ja-jp/azure/site-recovery/azure-to-azure-move-overview

Q. バックアップデータのレプリケーションは再開されるか

A. プライマリリージョンからセカンダリリージョンへのバックアップデータレプリケーションは災害復旧次第再開されます。
一方プライマリリージョンのデータが失われていたとしてもセカンダリリージョンからプライマリリージョンへのバックアップデータのレプリケーションは行われません。

CRR に関する説明は以上となります。

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